コンテンツへスキップ

カート

カートが空です

記事: 【NEW】「おしぼりに価値と文化」を与えた 二代目・藤波克之の躍進(後編)

【NEW】「おしぼりに価値と文化」を与えた 二代目・藤波克之の躍進(後編)

新商品の開発を機に海外へ視野を広げ、VB(抗ウイルス・抗菌技術)の研究に踏み込んだ藤波克之さんは、おしぼりを「文化」として届ける道を選んだ。その延長線上に生まれたのが、2025年9月に開店した河口湖の体験空間『Expression』である。FSXはどこへ向かおうとしているのか。その現在地を追う。

 

レンタル業からメーカーへの転換

藤波さんは「おしぼりに新しい価値を与えるのが自分の使命」と確信し、おしぼりにさまざまな可能性を見出すため、画策する日々を送っていた。そんな時、他社のおしぼりに違和感を覚えた。

「何とも言えないケミカルなにおいが鼻をついたんです。こんなおしぼりでは女性から好まれないなと。今の時代、女性を味方にしなければ物は売れない。そこで考えたのが、天然のアロマの香りをつけたおしぼりでした」

そうして2006年4月に生まれたのがおしぼり・タオル用芳香剤『LARME(ラルム)』だった。天然100%のエッセンシャルオイルを使用した『LARME』は、ケミカルな香りと一線を画すナチュラルな香りが魅力。またたく間に話題になり、タオルウォーマーを備えたエステやネイルサロンなど注文が殺到する。


おしぼり・タオル用芳香剤『LARME』


「ラルムはレンタル業だった藤波タオルサービスが、メーカーになるきっかけを作ってくれました。おしぼりは日本の文化。飲食に限らず価値を広げられるという自信を持てました」

翌年の2007年には、高級紙おしぼり『アロマペーパータオル』も開発。藤波さんは同業者への卸売りやネットによる全国通販も始め、ビジネスモデルを変革。これにより、「おしぼり=飲食」だった常識が、完全に覆された。同業他社のライバルが“顧客”へと姿を変えていく一方で、コアを見極め、研ぎ澄ます。この転換こそが、後のブランド再構築とVB技術の展開へとつながっていく。


『アロマペーパータオル』


VB技術によって、さらにおしぼりの価値がアップ


『LARME』や『アロマペーパータオル』が市場を広げる中、藤波さんの視線は“心地よさ”だけでなく、安全性を科学で裏づけることへ向かった。転機のひとつとなったのが、海外展開だ。2012年頃からジェトロの支援を受けて香港の展示会へ出展し、「日本のおしぼり」を海外に伝える取り組みが始まる。2016年にはアメリカ法人を設立。その後、香港・ベトナムにも法人を立ち上げ、文化としての“おしぼり”を海外へ届ける体制を整えた。

「海外の現場でも使われる以上、手や肌に直接触れるおしぼりは、安心を客観的に示せることが重要になります。この実感が、抗ウイルス・抗菌・抗酸化作用をもつ独自技術VB(ブイビー)の研究へつながっていきました」

VBは、東京工業大学・慶應義塾大学合同ベンチャーとの共同研究から生まれた。その技術を用いた抗ウイルス・抗菌ウェットタオル『VBケア』が2014年に販売開始。感覚ではなく、エビデンスとデータで安全性を示すという方針の起点となった。
また、藤波さん自身、横浜薬科大学で博士課程に進み、研究に直接関わりながら論文も発表。代表として語るだけでなく、自分で確かめる姿勢が、VBをFSXの事業を支える大きな柱に育てていった。コロナ禍では、「触れること」への不安が社会に広がり、VB採用の動きが加速。
新幹線などでも導入され、公共交通・接客の現場で存在感をさらにアップ。その歩みが、FSXの価値を押し上げている。

 

河口湖「Expression」──FSXの世界観を“味わう”

2017年には社名をFSXに変更。そして今、FSXが届けてきた「おしぼり」の価値は、単なる衛生用品の枠を越え、「体験」そのものへと向かい始めている。その象徴が、河口湖に新しくオープンしたフレンチカフェ&テラス「Expression」だ。閑静な場所にある店は、藤波さんの描く世界観をそのままカタチにした場所。カフェとショールームが一体になっており、食事の流れのなかでFSXの製品を体験できる。食事の前、ただおしぼりで手を拭くだけの行為に、香りや温度、触れるタイミングが重なり、静かな心地よさが印象強く残る。



『Expression』の料理と空間 ©YUKA UESAWA


おしぼりの香りをメニューから選べるというのも、FSXプロデュースならではの視点。「高馬(コウマ)」と名付けられた最上級のおしぼりの質感は、これまでに味わったことがないやわらかさ。もちろん料理にも並々ならぬこだわりがある。人気はローストした甲州産の豚、鶏、牛の3種の部位を載せたミックスプレート(5200円)。焼き加減が絶妙で、それぞれの肉の魅力が最大限に引き出されている。ともに添えられたふわふわのパン・ド・ミは店内で焼き上げたもの。特殊な技術で野菜の水分を閉じこめたクリスタルサラダも、舌の記憶に残るフレッシュさだ。新しい河口湖のスポットとして、話題を呼んでいる理由が良くわかる。

今後は宿泊やトイレタリー、研究機能など複合的な展開も検討しており、「泊まって、触れて、実感してもらうところまでいけたら」と藤波さんは語る。
『Expression』は、販売拠点でもショールームでもない。FSXが長年磨き続けてきた「価値あるおしぼりの心地よさ」を体験として提供する場所。ここで生まれる小さな気づきが、おしぼりの価値をもう一度、訪れる人の生活へと還していく。そんな気がした。

 

日々使うものこそ丁寧に──その気づきが、FSXの歩みと静かに呼応する

そんな藤波さんの取り組みをたどると、HAGANが大切にする姿勢と深く呼応する点が見えてくる。HAGANは「製品=至高」、「妥協を許さない」という思想を掲げる。スマートフォンを「ビジネスアスリートの刀」と捉え、素材・設計・機能を徹底的に突き詰める。藤波さんは、そんな部分にFSXとHAGANとの共通点を見出した。

「正直、HAGANに出会うまでは、スマホケースは何でもいいと思っていました。実際にHAGANを使ってみて、“良いものを持つ意味”を初めて実感しました。スマホって常に他者の目にも触れるものじゃないですか。だからこそ、安くてもいいという考えを捨て、きちんと作られたものを持つって大事なんだなと思いました」

今、藤波さんはビジネスシーンの相棒としてHAGANを昇華させている。その感覚は、おしぼりを「ただの消耗品」にせず、文化と価値あるものとして磨き続けてきたFSXの歩みと重なった。

 

藤波克之

1974 年生まれ。法政大学社会学部応用経済学科卒。NTTGroup勤務を経て、2004年に前身となる株式会社藤波タオルサービスへ入社。09年に代表取締役専務に就任し、13年9月より現職。
22年3月横浜薬科大学大学院薬学研究科 薬科学修士課程 修了
24年8月カリフォルニア大学サンディエゴ校 公共政策大学院 修了
ファミリー・ビジネス・ネットワーク・ジャパン 理事

Read more

「おしぼりに価値と文化」を与えた 二代目・藤波克之の躍進(前編)

「おしぼりに価値と文化」を与えた 二代目・藤波克之の躍進(前編)

今やVB(抗ウイルス・抗菌技術)を配合したおしぼりを世界へ展開する『FSX』。その舵を取るのが二代目である藤波克之さんだ。もともと「人前に立つのが苦手で、経営者タイプではなかった」と語る彼は、いかにして自らの役割に目覚め、コロナ禍すら追い風へと転じたのか。──その原点をたどる。 FSX株式会社 代表取締役社長の藤波克之さん   病弱で引っ込み思案だった少年が走り出すまで 「僕はいわゆる人...

もっと見る